APN の 活動: APN/兵庫県共催国際シンポジウム
APN レポート 2010年は国連が定める「国際生物多様性年」にあたること、また 生物多様性条約第 10 回締約国会議(CBD COP10 ) のプレイベントとして、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク ( APN) は、兵庫県、兵庫県立人と自然の博物館、財団法人ひょうご環境創造協会、財団法人国際エメックスセンターと共催で、2010年9月9日、神戸市中央区の兵庫県公館において、約350人の参加のもと、生物多様性国際シンポジウム「すべてのいのちが共生する兵庫を私たちの手で未来へ〜生物多様性を考えるNGO ・NPO 、市民のHyogo 対話〜」を開催しました。 このシンポジウムは、各地域における様々な活動から得られた生物多様性に関する知識の共有の重要性を理解し、議論していく上でのプラットホームとして、参加者に機会を提供しました。 シンポジウムは、大きく以下の4つのセッションで行われました。
シンポジウムの冒頭、金沢和夫兵庫県副知事は、参加者に歓迎の意を表した後、コウノトリの野生復帰を含む、兵庫県での生物多様性保全活動とその成果を紹介しました。 この取組において、絶滅の危機に瀕しているコウノトリを現在では46羽まで繁殖させました。また、副知事はこうした生物多様性保全に係る取組を促進するための県民緑税の重要性について説明しました。 基調講演:「私たちの未来と生物多様性」 鷲谷いづみ 東京大学大学院教授は、 生物多様性の現状を認識し、近い将来それをどのように改善できるかということが、人類の未来の鍵を握るだろうと、生物の多様性保全の重要性を述べました。 同教授は、日本の生物の多様性の現状を評価するために生物多様性総合評価検討委員会によって行われた総合的評価である「生物多様性総合評価」の結果を紹介しました。 また同教授は、人々の生物多様性保全への認識が、生物多様性の喪失にブレーキをかけて、より良い未来への道すじを創り出す最も効果的なアプローチの1つになることを強調しました。 セッション1:「生物多様性と生態系サービス」 椿 宜高 京都大学生態学研究センター長は、生物多様性と生態系サービスの概念を参加者に紹介しました。生態系サービスは、自然生態系およびそれらを作る種が、人間の人生を支えて充足する状態と過程です。同センター長は、非常に想像的な質問を参加者に投げかけることによって、生態系サービスの重要性を強調しました。人間が月に向かって飛びたかったなら、何百万もの種の中からどれを持っていくであろうこと、またたとえ種を厳選したとしても、種のリストは非常に長くなるだろうと述べました。 谷内茂雄 西太平洋・アジア地域の生物多様性ネットワーク事務局員は、滋賀県の琵琶湖において、生物多様性を分析、モニターする際に行った研究結果について説明しました。同局員の研究チームは、地理的なデータセット (1947 年と2001 年の歴史的な地理的な画像比較) と地域の共同体の社会学の調査の両方を用いました。そして研究では、差し迫った問題について議論する場合、合理的な方法より、むしろ感情的な説明の方が農業者及び地域共同体を説得させるにあたって効果的であることを示しました。 ジェームズ・ピーターズ 大メコン河流域環境活動センターチーフアドバイザーは、生物多様性保全を支持して生態系サービス市場を活性化させるアジア開発銀行の取組と、大メコン河流域の気候変動適応戦略に関するコアプログラムを紹介しました。説明の中では、生物多様性問題には国境がないことを例証し、経済発展との非常に親密な関係を持っていることを述べました。したがって、生物多様性保全は、包括的なアプローチを必要として、 ( 経済、都市、戦略など) すべてのタイプの計画に組み入れられる必要があると述べました。 中尾文子 国際連合大学高等研究所研究員 は、地域社会と生態学の景観形成として国際的に知られている、 "Satoyama" の概念について説明しました。"Satoyama" イニシアティブでは、社会に自然との調和を認識させ、社会経済活動( 農林業などの) における持続可能性と自然な風景の保護のバランスを促進することを思い描きます。そのようなライフスタイルは多くの国の一般的な伝統的な習慣でしたが、里山の風景は、今日、急速な都市化と開発の圧力に直面しています。日本政府と国連大学は、この考え方を推進し、地球的規模における取組を促進します。 セッション2:「生物多様性とNGO・NPO、市民の関わり」 このセッションで、 生物多様性条約市民ネットワークの 道家哲平氏は、 生物多様性条約第 10 回締約国会議(CBD COP10 ) 開催に向けて市民の活動と役割を紹介しました。同氏は、市民団体が COP で発言する機会を与えられていること、今回のCOP はCBD をいかなる他の国際会議よりも市民参加型であることに言及しました。同氏は日本での 生物多様性条約市民ネットワーク の活動を行っていますが、地元の住民がどのように CBD の目標に貢献できるかをグローバルに伝えています。 「本当の仕事は時間と努力がかかります。」と伝えた、三木自然愛好研究会の小倉 滋氏は、かつて絶滅した種を地域社会に戻すために何年間も働いていました。例えば、コミュニティーガーデンに笹百合を生息させるのに5年間の激しい仕事と慎重な保育を要しました。そして、以前生息していた場所にギフチョウを戻すために10年間の仕事を行いました。同氏のグループは、現在、三木市域に生物の多様性を保存するため一生懸命活動を行っています。地方自治体の協力を得て、このグループは次世代の方々や小学生などと活動を推進しています。 地域での協働に関して話す中で、兵庫・水辺ネットワークの安井幸男氏は、地域全体の環境保全活動の一部が地元住民と協働して行われたこと、それらがどう生物多様性保全に向かって進められているかを説明しました。同氏は、土地所有者、水利権所有者、自治会等、地元の学校、公的機関、専門家やNPO団体や、生物多様性保全において未来に伝えていく上で重要な役割を担う子供が、パートナーシップを確立していく必要性を強調しました。 また、海外から優れた生物多様性保全活動も報告されました。 アナック・パッタナヴィボーン 野生生物保全論研究会タイ支部タイ・カントリープログラム・ダイレクターは、タイ南部のブード山でサイチョウを救う取組を紹介するために招待されました。サイチョウは、非常に高い市場価格で取引されるため、巣の密猟と破壊など、地元の村人に手広く脅かされていました。サイチョウ保護チームは、狩猟地域の住民に効果的に働きかけ、今ではハンターは代わりにサイチョウを警備するようになりました。同氏は、彼らが日本を含む諸国また様々な国際機関から受けている支援についても言及しました。
「総合セッション」パネルディスカッション パネルディスカッションで鷲谷教授は、生物多様性 Hyogo 市民宣言に関するコメントをパネリストに問いかけました。そして、同教授は、誰もが日常生活でどのように生物多様性を保全できるかを考えながら活動するよう奨励しました。発言者、参加者はこの市民宣言に賛辞を送りました。 参加者との質疑応答では、 ”Satoyama” イニシアティブへの非常に高い関心が寄せられました。また兵庫県や地域の保全団体によって実行された活動を知ることができ、満足した様子でした。国際的で興味深い活動の発表も好評でした。これからのイベント等には、このような全球レベルの事例も取り入れるよう要求がありました。 また、いくつか提起された問題がありました。ある女性は、奥山の荒廃した様子を指摘した上で、熊や猪のような動物が食物を探して人里にやってくるなど、身近なところから見つめていくよう、政府や自治体に問題を提起しました。 閉会 鷲谷教授は、参加者全員に感謝の意を表しました。そして、生物多様性を保全することに向かって、だれもがよく考え、行動するよう奨励することによって、議論を終えました。 最後に APNは、今回のシンポジウムが成功裏に開催されたことについて、兵庫県やその他の共催団体のご支援に対して、厚くお礼申し上げます。 |